普段から「あれがおすすめ」「これがおすすめ」と言っている本人が、いったい何を使っているのか。気になる人は多いでしょう。
今回は、年間50台以上のPCをレビューしているウチヤマチカラが、実際に買って使っているものを紹介します。あわせて、ビジネス上の戦略や、僕なりのモノの選び方の基準も含めて解説していきます。
僕のPCの選び方の基準について

僕がPCを選ぶときは、職業としての用途が中心です。たとえばクリエイティブ用途では、Macが優秀だということは検証しているので分かっている。でも一方で、マルチタスクで重要になるマルチモニター環境を組もうとするとコストがかなり高くつくことや、レガシーソフトが対応していない問題もある。つまり僕は、性能だけでPCを選んでいるわけではありません。
この判断には、ビジネス上の戦略も絡みます。そもそも僕が扱っている商材はPCで、YouTubeでは毎回ストレートに紹介していますが、僕たちアフィリエイターは「売れてなんぼ」です。Macが売れても、せいぜいAmazonから報酬が入る程度なので、わざわざ絶賛する理由もない。かといって、性能的に批判する必要もない。だからライブ配信などで聞かれたときは、今書いているような事情をそのまま伝えますし、このスタンスは今後も変わらないと思います。
もうひとつ、あまり表では語らない“戦略”としては、市場で強いメーカーの製品を優先して取り上げることです。分かりやすい例がレノボで、レノボは価格面の優位性が強いぶん、レビューと相性がとてもいい。要するに「価格が安くて、レビューと相性がいい製品を買う」という判断ですね。もちろんこれまでデルやHPの製品も購入して使ってきましたが、SNSが発展するにつれて、視聴者・読者が価格を重視する割合が確実に上がっているのを感じています。こうした総合判断の結果として、僕はレノボが展開するラインナップの中から、競争力がありそうな製品をピックアップしている、というわけです。
競争力のありそうな製品をどうやって見つけているか

競争力がありそうな製品をどう判断しているかというと、市場調査、YouTubeにつくコメント、ライブ配信で寄せられる質問、メーカー取材、大手企業のアフィリエイトサイトの取り上げ方、そして自分の検証結果——これらを全部ひっくるめて、トータルで判断しています。
たとえば一番多くのデータを持っているのはメーカーです。メーカーが語る内容を「市場で実際に起きていること」だと仮定して聞くと、「なるほど、ユーザーは今こういう悩みを抱えているんだな」が見えてきます。そうした課題が、製品側の新機能や新しいチップ搭載といった形で反映されていく。だから僕は、「じゃあそれを実際に試してみよう」という流れで、次に触るべき製品を決めています。
自分に必要なスペックはどうやって判断するか

実際に自分が使いたい性能がどれくらいかというと、僕のYouTubeを見てもらえれば分かると思いますが、編集自体は大したことをやっていなくて、基本はカット編集のみです。どちらかといえば、検証パートや市場調査で「どのデータをどう伝えるか」を考えている時間のほうが圧倒的に長い。
とはいえ、必要最低限のラインは明確にあります。具体的には「フルHD解像度のプロジェクトを滞りなく編集できる性能」です。ここはCPUだけではなく、GPU性能がボトルネックになりやすいので重要になります。実際、あとで紹介しますが、Yoga Slim 7i Gen 9はフルHDなら○でも、4Kになった瞬間に詰まってしまうことが多く、快適とは言えません。ただ、カジュアルクリエイターがYouTubeにアップする解像度は、今もフルHDが主流です。だからこの性能なら十分だろう、という判断で購入しました。
ちなみにYoga Slim 7iについては、性能を事前に確定で把握していたわけではありません。Core Ultra Vを触っていない状態でしたが、Core Ultra 7 155H搭載のSpectreなどは触っていたので、そこから「何%伸びる」という情報をもとに、じゃあいけそうだな、という見立てで購入を決めています。
ウチヤマチカラが使っているPC
Yoga Slim 7i Aura Edition Gen 9(15.3型,Intel)

Yoga Slim 7i Gen 9は、15.3型でCore Ultra 7 258V/メモリ32GB/SSD 1TBを搭載した、クリエイター向けのノートPCです。これまで主流だった15.6型ではなく、MacBook Airが採用した15.3型に寄せることで、競合と比較される土俵にしっかり上がれるようにした、レノボらしい意図が見えるモデルでもあります。
Core Ultra 7 258Vに搭載されているGPUはIntel Arc 140Vで、RTX 3050ほどの性能はないものの、GTX 1650よりは上という立ち位置です。つまり「内蔵GPUとしてはかなり強い」部類で、フルHD編集や軽めのクリエイティブ用途なら十分に戦える性能を持っています。加えて最新世代の設計ということもあり、バッテリーの持続時間が長い。高性能なプロセッサを“長い時間”使えるのは地味に大きなメリットです。さらに、低消費電力で高い性能を出せるということは、発熱や負荷の面でも余裕が出やすく、結果として壊れにくさにもつながる。そういう意味で、かなり信頼できるノートPCだと思っています。
Yoga Slim 7x Gen 9

このPCはSnapdragon X Eliteを搭載した14.5型のノートPCです。OLEDパネル搭載、かつARMプロセッサ採用という尖った構成なので、ユーザーがよく疑問に思う「OLEDの焼き付きって大丈夫なの?」「スナップドラゴンってぶっちゃけどうなの?」に、自分の実体験で答えるためにサブPCとして運用しています。
今はリビングに置いていて、気になったことがあればすぐ生成AIサービスで調べたり、YouTube視聴用のデバイスとして使うことが多いです。バッテリーのサイクルカウントが100回を超えても特に問題は起きておらず、OLEDも焼き付きの兆候は見られません。そういう意味では、このPCもサブ機としての役割は十分果たせていると思います。
ThinkPad X1 Carbon Gen 13

このPCは、5GノートPCの検証用に購入しました。僕の予測どおりなら、2026年以降はオールウェイズコネクテッドPCがより主流になっていくはずです。スマホみたいに、いつでも通信できる状態が当たり前になる世界ですね。
ビジネスや勉強の文脈で見ると、現時点で生成AIにいちばんアクセスしやすいデバイスはノートPCだと思っています。生成AIに触れられる時間=自分の生産性や能力の向上に直結するので、そこを最大化するための道具として、業界でも評価が高いThinkPadを選びました。あと、散々おすすめしておいて自分が持っていないのはさすがにまずい、という理由も正直あります。
X13とも迷いましたが、今回はまず最高のものを選んでおきたかったので、X1 Carbon Gen 13を使っています。
Legion Tower 5 30IAS10

4K以上のモニターをレビューするときの検証用として購入しました。ゲーム性能をマウスコンピューターや日本HPの人気シリーズと比較したうえで、価格的に魅力があったこと、そして製品クオリティが「自分が満足できる最低ライン」をちょうど満たしていたことが、選択肢に上がった理由です。
ゲーム業界は、軽いゲームはハンドヘルド、重いゲームは大きいPCという住み分けが、あと数年は続くと思っています。なので、このPCもしばらくは検証機として机の下に置いて運用する予定です。4Kゲームを高画質で動かしても、机の下に置いておけば騒音がほとんど気にならない、というのは地味に良い気づきでした。
最後にコスパ最強を選ばない理由について

最後に、僕が「コスパ最強」をそのまま鵜呑みにして選ばない理由を書いておきます。僕は記事でもYouTubeでも「コスパ最強」という言葉をよく使いますが、僕にとってのコスパ最強は、あるカテゴリーの中で“市場が想定しているターゲット価格よりも安く設定されている”、そして「それには理由がある」という文脈で使っています。
もちろん、他の発信者は本当に“最高”だと思って推しているケースもあるでしょう。ただ、僕の中では「この用途では使えるけど、用途が変わると別モデルのほうが強い」という妥協がだいたい入ります。僕も一応ビジネスパーソンとして活動している以上、道具が原因で市場に負けるのは許されません。
たとえば、コスパ最強と言われがちなYoga Slim 7 Gen 10 AMDは確かに優れています。でも、僕が今使っているYoga Slim 7iと比べたときにどうか。バッテリー持ちはそこまで良くない、クリエイティブ性能も強くない。結局「優れているのはCPU性能と価格」という整理になってきます。で、僕の場合はCPU性能と価格が最重要ファクターではない。だから、コスパ最強と呼ばれていても選ばない、という判断になります。
道具が理由で負けるとは

今はAIがあるので分かりやすいですが、ノートPCに触れている人とスマホに触れている人では、AIにアクセスしてアウトプットする効率は、たいていの場合ノートPCのほうが上だと思います。
そうなったときに重要なのは、妥協した製品ではなく、キーボードの打ちやすさ、PCの性能、ファンノイズの少なさ、モニターの見やすさ、拡張性の使いやすさ――こういった部分がトップクラスに優れていることです。ここで「この機能は使わないから不要」と結論づけた結果、別の場面で不利になって、他の発信者に負けるのは許されません。
アフィリエイターやYouTuberの世界は、真似し真似されます。これはブロガー時代からずっと感じていたことですが、紹介した製品が、気づいたら他の人にもなぜか「おすすめNo.1」になっている、なんてことは珍しくありません。だからこの戦いを勝ち取るためには、自分の生産性を常に最高の状態に保っておきたい。そのためなら、予算に最初から強い上限は設けません。まあ、少額一括償却の範囲内なら僕はOK、という感覚です。
話は変わりますが、僕が筋トレを続けているのも「負けたくないから」というのが理由です。筋トレをしてホルモンを整え、筋肉がつくと、判断力も体力も上がるので、生産性が高い状態を保ちやすくなる。
最良を知れば、ユーザーの悩みをより深く理解できる
そして最良を知らない人ほど、低価格のノートPCを賛美しすぎてしまい、優れた製品の良さを伝えられない人になってしまいます。製品はメーカーが市場から集めた“答え”です。そこを理解できると、それを欲している人の気持ちも理解できるようになります。
