生涯投資家、タイトルからもとても強い意志を感じるこの本の著作者は村上ファンドで一躍有名になった村上世彰さん。
村上世彰さんのことを一般の人は覚えているだろうか。
[amazonjs asin=”4163906657″ locale=”JP” title=”生涯投資家”]11年越しの真実、インサイダー取引の容疑で2006年6月に逮捕された村上世彰さん本人の著作物、「生涯投資家」が今年2017年6月に文春e-bookから発売となりました。村上世彰さんがかけられた容疑はインサイダー取引なので僕は「金に汚い大人が起こした犯罪」と単に思ってしまう内容だと感じていました。
そういう意味でも沢山の人の目に触れられる必要があるべき本ですし、村上世彰さんが手がけてきた「もの言う株主は」件のニッポン放送の買収だけに留まらず、あしき風習の根付いた日本の企業に待ったをかけた話が赤裸々に告白されている。
日本の闇の部分を白日の下に晒す。そんな意思が感じられるこの本は、投資を行ったことのない人にも読みやすくするために、専門的な箇所はざっくりとわかりやすく説明してくれます。
読み終えた感想は、村上さんにとっても人生をかけた渾身の1冊になっているこの本は大ベストセラーになるに違いない。そう思える内容でした。
この記事では僕が思った感想を率直に記載していきたい。
サラブレットの天才投資家村上ファンドの村上世彰の人物像を知る。
小学校三年生から父親の教えの下株取引をスタートさせる
この書籍の大切なところはやはり村上世彰さんを知る、官僚を知る、大企業を知ることだと思います。僕が以前読んだ書籍で、(横尾宣政 著)『野村證券第2事業法人部』があります。『生涯投資家』も同じようなテイストになっており、自分の半生を描きつつ、真相に切り込んでいくといった内容となっています。
村上世彰さんがどんな人間だったのかを知ることができます。読めば読むほどに村上さんは異次元の天才だったんだなと感じてしまったので僕はある人を思い出してしまったのですが、それは次の項目で記載します。
「子どもの頃、預金通帳に印字された数字が増えていくのを見るのが好きだった。だからよく父に、「お小遣いちょうだい、ちょうだい」とせがんでいた。使いたいからではなく、貯めるためにお金が欲しかった。お小遣いをもらうと口座に入れ、通帳に刻まれる残高を眺めていた。 百貨店に行くのも大好きだった。おもちゃをねだったり、貯めた小遣いで何か買うためではない。いろいろな商品の値札を見ては、「これは高い、これは安い」と騒いでいた。商品そのものより、商品の価値に興味があったのだ。私は、少し変わった子どもだった。 父の仕事は投資家だった。
「父はいつも「上がり始めたら買え。下がり始めたら売れ。一番安いところで買ったり、一番高いところで売れるものだと思うな」と言っていた。まさにその通りだった。 私の最も尊敬している投資家は、父である。投資哲学は、すべて父から学んだ。「上がり始めたら買え、下がり始めたら売れ」という右の教訓は、今でも私の投資の基本になっている。」(『生涯投資家 (文春e-book)』(村上世彰 著)より)
幼少の頃からスポーツをやっていた子がスポーツで秀でた成績を出せることは珍しくなく、投資の世界も若くして始めた方が良いといっている賢人がいます。日本人の金融リテラシーが低いのは投資が嫌いだからでないことは昨今の仮想(暗号)通貨を見ればわかることだと思いますが、投資の仕方を教えてくれる父親が日本の家庭に何人いるのでしょうか。
少なくとも小学三年生で自発的に株(投資商品)を買う子供はインターネットがこれほど発達した現代でもいないと思います。村上世彰さんはまごうことなきサラブレッドなのだと感じました。
父親の教えで官僚になる
「父は、強く言った。 「国家というものを勉強するために、ぜひ官僚になれ」 このアドバイスに従い、結果として十六年間の役人生活を送ることになった。私が投資家に戻るのは、四十歳を目前とした一九九九年のことだ。 大学卒業後は通産省に入省した。官僚というのは公僕(Civil Servant)であり、国民の生活をよりよくするために尽くすことが仕事である。私は国のため、国民のために、通産省にいた十六年間がむしゃらに働いたし、日本のあるべき姿について常に考えていた。その中で、日本経済の永続的な成長のためには、コーポレート・ガバナンスが大切であることを実感し、これを自らがプレーヤーとなって変えていこうと決意して、四十歳を目前にファンドを立ち上げることにした。」(『生涯投資家 (文春e-book)』(村上世彰 著)より)
官僚は、東大クラスの頭脳を持った人間でなければ成れない。村上世彰さんは東大を卒業し、通産省に入省されていることからも一般人からしたら異次元級の天才なわけです。成れと言われて成れるものではないと思いますが、経歴は文句なしの怪物です。エリートとは村上さんを指して使われるに違いないと思いました。
僕は知らなかったのですが、通産省は官僚の中でもエリートらしいのでまさにエリート中のエリートですね。
前身の通商産業省は、かつては日本経済ないし「日本株式会社」の総司令塔として高度経済成長の牽引役とされ、海外でも「Notorious MITI」(ノートリアス・ミティ、悪名高い通産省)ないし「Mighty MITI」(マイティ・ミティ、力強い通産省)と呼ばれ、その名は日本官僚の優秀さの代名詞[4]として広く轟いていた[5]。 その持てる許認可や行政指導をあまねく駆使し、さらに政府系金融の割り当て融資(財政投融資)、予算手当て、補助金などを力の源泉として主に産業政策を掌り、のみならず通商や貿易、技術革新に応じた科学技術開発に加え、特許、エネルギー政策、中小企業政策など幅広い権限を保持した。-wikipediaより-
もともと富裕層な生活でグローバルな視点を養ってきた村上さんは敵対的買収などによって一躍有名になり、件のニッポン放送買収を画策するわけですが、それは是非この本を読んでほしいと思います。
- インサイダー取引の容疑で逮捕された村上さんはエリート中のエリートだった
オマハの賢人ウォーレンバフェットとの共通点
投資家と言ったら必ずでてくるビッグネームといえばオマハの賢人で知られるウォーレン・バフェットです。投資の世界でいう神様。ゴッド。ハイパー金持ち。
そんなウォーレンバフェットと村上世彰さんの共通点を見ていきたいと思います。
投資スタイル
ウォーレンバフェットも村上世彰さんも投資手法はバリュー投資。本来価値があるはずの割安株を見つけてバイアンドホールドする手法です。僕個人の意見としては、アメリカのダウを見ればわかる通りバイアンドホールドしていれば巨万の富を築けるので、アメリカは本当にすごいなと感じるところです。結果論的な意見なので恐縮なのですが。
幼少期の頃からの投資
バフェットは11歳の時に初めて株式を購入した。姉のドリスと共にシティ・サービスの優先株を1株38ドルで3株購入したのだが、その後、1株27ドルまで下落した。バフェット達は1株40ドルまで値を戻したところで売却したが、シティ・サービス株は長期的に上昇し続け200ドルになった。この経験からバフェットは忍耐を学んだと後に述懐している[23]。-wikipediaより
有名ですねコーラを売りながら種銭を稼いで投資をした話です。ウォーレンバフェットの投資は11歳からでした。
私が自分で株への投資を始めたのは、小学三年生の時だ。父が百万円の帯付きの札束を置いて、こう言った。 「世彰は、いつも小遣いちょうだいと言うが、いま百万円あげてもいい。ただしこれは、大学を卒業するまでのお小遣いだ。どうする?」 見たこともない大金を目の前に、私は興奮した。それでも冷静になって、計算した。 「お父さん、大学卒業までだったらあと十四年もあるから、百万円じゃ少ないよ。大学入学ならちょうど十年だから、年間十万円になる。だから、大学に入るまでのお小遣いにして!」 そうお願いして、十年間のお小遣いを一括前払いということで、百万円の現金を手にした。この百万円を元手に、株の投資を始めた。」(『生涯投資家 (文春e-book)』(村上世彰 著)より)
小学校三年生というと9歳の時ですから、ウォーレンバフェットよりも早く投資をしていることになります。状況は違えど幼少時から株式投資をするというのはどちらも共通しています。
ITに弱い
投資の神様と言われるウォーレンバフェットでも失敗することはあったようです。投資家の失敗は損することではないと口々に言われますし、これも本人に聞いたわけではないので真実かどうかわからないのですが、ウォーレンバフェットはIntelに投資しなかったことをすごく悔やんだと言われています。ハイテク株など資産価値が見えないものに投資するのを嫌ったバフェットは創業当時のインテルへの投資を断ったことが有名です。
実際には何も損をしていないのにミスを犯したと思い込めば、本当に多額のお金を失うミスを犯す羽目になるだろう」有名な話だが、ウォーレン・バフェットはインテルの創業時に投資をするチャンスがあったが、自分が理解できないテクノロジー企業には投資しないと決めていた投資は行なっていない (天才投資家「お金と人生」の名語録: ウォーレン・バフェットから、ジョージ・ソロスまで
著者: 桑原晃弥より)
一方で村上世彰さんも同じようなことを言っています。
村上ファンドを立ち上げて、私は有名なファンドマネージャーになった。一方で私は、時代遅れの投資家なのだということもひしひしと感じる。二〇〇〇年代に入ってからITブームが来て、有形資産をもたないIT企業の株価が「成長性」をもとに高く評価されているが、私には理解できない世界だ。「売上が毎年倍になっていって」とか、「今は赤字だけど、十年後には一千億円の利益を出します」という事業計画を、精査するスキルが私にはない。だから、IT企業への投資を躊躇してきた。” (from “生涯投資家 (文春e-book)” by 村上世彰)
このように、株式投資を始めた年齢から投資スタンス、苦手なことまではバフェットと共通点は多くあります。孫正義社長がウォーレンバフェットのようになると強く訴えかけていますが、孫社長は二人が苦手なIT、ハイテク投資にめちゃくちゃ鋭い嗅覚を持っているように感じます、ヤフーの時も、iPhoneの時も、村上さんができなかったIT企業の投資を当て続けていますから、孫社長は違う持ち味を持った投資家なのではないかと思いました。
僕が村上さんの人物像で興味深いと思った点を挙げて見ました。それでは本のオススメポイントを列挙したいと思います。
- 投資手法はお互いに王道の割安株を買うバイアンドホールド
- 物心ついたその時に投資を始めた
- 資産価値をベースに考える投資はしてきたが、IT、ハイテク分野には手を出さず
生涯投資家を読むことで得られる情報
これまでに僕が挙げた内容はこの書籍の冒頭部分で書かれていることであり、内容は濃いものとなっています。僕が特に面白くて溜飲が下がった、と思ったのは、日本のテレビがなぜつまらないか?に対する本質的回答がこの本に書かれていたからです。おかしな仕組みをおかしいと言って変えようとしたら捕まってしまった。なんということでしょう。
『生涯投資家』を読むことで得られる情報はかなり多くいとおもいます。それは村上さん熱い想いが込められてるとともに、昨今の時代の流れをきちんと投資家目線で論じてくれるからです。例のニッポン放送、フジサンケイグループからみる日本の闇、東芝粉飾決算問題の本質、フィンテック、ビットコインのこれから等。エリート中のエリートが語る時代とは一体なんなのか。気になる方は是非読みましょう。
最後にもう一度、11年越しで温められた自著ですから、内容もさることながら僕たちの転ばぬ先の杖としても是非活用してください。
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