ソニーが2021年6月25日から発売する、ノイズキャンセリング機能付きワイヤレスイヤフォン「WF-1000XM4」は前モデル「WF-1000XM3」で定評のあった音質をさらに向上。さらに、新型の統合プロセッサ「V1」によりノイズキャンセリング性能が大幅に進化。
メーカーより発売前に実機をレンタルし、バッテリーの持続時間やノイズキャンセリング性能について検証した結果から使い勝手をレビューしていく。
※今回筆者が検証した結果は製品の動作を保証するものではありません。
スペック
ヘッドフォン | |
---|---|
型式 | 密閉型(カナル型) |
ドライバーユニット | 6mm |
質量 | 約7.3g |
連続音声再生時間 | 最大8時間(NCオン)/最大12時間(オフ) |
連続通話時間 | 最大5.5時間(NCオン)/最大6.0時間(NCオフ) |
マイク | |
型式 | MEMS |
指向特性 | 全指向性 |
Bluetooth | |
通信方式 | Bluetooth V5.2 |
出力 | Bluetooth標準規格 Power Class 1 |
最大通信距離 | 10m |
対応コーデック | SBC,AAC,LDAC |
メーカー保証 | 1年※ |
ソニーストアで購入するとメーカー保証と同等の内容で3年間保証する「長期保証<3年ベーシック>」自動付帯。
他の販売店で購入した場合は1年なので、長期利用を考えるなら購入店はソニーストアがおすすめ。また、追加料金で水濡れ破損にも対応可能。
このほかソニーストアではイヤフォン紛失時に低価格で補償される「紛失あんしんサービス」も用意。
紛失あんしんサービスは、文字通りなくしてしまったイヤフォンを安価に補償してくれるサービス。加入料は2年で1,650円。イヤフォン購入時に同時加入で適用できるため、不安な方はこちらも検討を。
なお、紛失あんしんサービス概要はソニーストアのWF-1000XM4注文ページから確認できる。
特徴
ソニーのワイヤレスイヤフォンは、前モデルWF-1000XM3の時から音質に定評があり、WF-1000XM4はさらにブラッシュアップさせ満足感を与えてくれるガジェットに。
個人的に音質+αの部分がソニーが提供する付加価値だと思っているため、ソニーがアップデートさせたWF-1000XM4で素晴らしいと感じたポイントを紹介していこうと思う。
YouTubeでも紹介しているのでぜひチャンネル登録もよろしくおねがいします。
専用アプリ「Headphones Connect」で最適なイヤーピースを選択でき誰でも簡単に本来の高音質を手に入れられる
Headphones Connectはスマートフォン用のアプリケーションで、Android・iPhoneどちらでも利用可能。
WF-1000XM4には「S」「M」「L」3つのイヤーピースのなかから自分に合った最適なイヤーピースを選択することで、本来の音質を楽しめる。
例えるなら、ランニングシューズを選ぶ際に適切なサイズじゃないとうまく走れないように、如何にすぐれたワイヤレスイヤフォンでもイヤーピースのサイズが利用者に合っていなければ本来の性能を発揮できないということ。
このアプリ「Headphones Connect」はイヤフォンの知識がないユーザーでもWF-1000XM4本来の音質を手にいれられるようソフトがサポートしてくれるので心強い。だからWF-1000XM4はワイヤレスでも音楽を楽しみたいと思っているユーザーすべてにおすすめできる。
進化したノイズキャンセリングとともにハイレゾ級を長時間楽しめる
YouTube上で簡易的なアンケートをとったところ、圧縮音源をハイレゾ相当まで音質を高めるアップスケーリングテクノロジー「DSEE Extreme」をオンにした状態の連続再生時間を検証してほしいというものだった。
検証は「Headphones Connect」にてノイズキャンセリングを適用した状態でDSEE Extreme Auto/イコライザをVocalに設定。音楽ストリーミングサービスSpotifyの最高音質(320kbps)を連続再生し、1時間ごとにバッテリーの残量を専用アプリ「Headphones Connect」確認し表計算ソフトにまとめるというシンプルなもの。(この測定結果はWF-1000XM4の動作を保証するものではありません。)
WF-1000XM4の連続動作時間 | ||
---|---|---|
動作時間 | 左 | 右 |
1時間後 | 95% | 95% |
2時間後 | 80% | 79% |
3時間後 | 66% | 65% |
4時間後 | 53% | 51% |
5時間後 | 36% | 36% |
6時間後 | 26% | 24% |
7時間後 | 0% | 1% |
結果として、この方法では7時間ほど連続で再生しつづけることができた。
メーカーが発表している公称値はDSEE Extremeオフ/イコライザオフ設定時とのことで、WF-1000XM4はほぼスペックシート通りに動作すると思っていいだろう。
この「スペック通りに動作してくれる。」というのは一つの家電製品として素晴らしく、メーカーが真摯にモノづくりに向き合っているからこその結果だと思う。つまり、ソニー最高!!
この連続動作時間はガジェット好きの心を射止めるには十分なスペック。
バッテリーを搭載したガジェットは数年でバッテリーの健康度が損なわれ販売時の90%80%のバッテリーパフォーマンスになってしまう。それでもなお、小一時間かかる通勤通学は余裕でこなせてしまうし、小旅行の移動時にもバッテリー切れの心配はないと思う。
ケースがワイヤレス充電に対応し小型化、「俺」史上最高のワイヤレスイヤフォンに
前モデルのWF-1000XM3からの進化はイヤフォン本体だけに限らずケースも大幅な改良が施されている。
WF-1000XM3の自立しない大きなケースに頭を抱えていたユーザーも多いとは思うが、WF-1000XM4はケース本体も小型化することで、携帯性がアップ。
ワイヤレス充電にも対応し、「これがあったらいいのにな」を搭載。非常に満足度の高い製品になったと感じた。
WF-1000XM4
ソニー ワイヤレスノイズキャンセリングイヤホン WF-1000XM4 : 完全ワイヤレス/Amazon Alexa搭載/Bluetooth...
デザイン・操作性について
WF-1000XM4のケースは楕円系のデザインで、上部は小型化したことで緩やかなカーブを描いている。
ケースカラーはツヤ消しのマットブラック。
個人的にはWF-1000XM3の、黒とオレンジの配色の高級感が気に入っていたのだが、シンプルなカラーになった。
最近はライフスタイルに合ったモノ選びをするユーザーが増え、派手さよりもシンプルを好むようになったからだと思う。
ケース背面のUSB-C挿し口は本体中心部からやや下に設置されている。細かい点を言えば、USB-Cの挿し口はなくてもよかったかもしれない。
WF-1000XM4のデザインは全体的に見事なため、この充電口が気になってしまう。「上下の中心からずれた穴」は「完成」された製品だからこそ感じる違和感なのだ。
ユーザビリティとのせめぎあいはあったかもしれないので、国内メーカーらしいといえば国内メーカーらしい。
イヤフォン本体もケース同様、WF-1000XM3の直線的なデザインから、柔らかさを感じる曲線的なデザインに。
曲線デザインは、耳へ装着した際のフィット感が増し、限りなく自然な感じでイヤフォン本体を支えてくれる。
性能について
PCレビュアーとして活動している筆者はホワイトノイズに悩まされることが多いため、WF-1000XM4でどの程度ノイズキャンセリングが効くのかを検証してみた
ノイズキャンセリング性能
動画編集用のノートPCを最大パフォーマンスで動作させた際のファンの動作音を騒音計で測定。ノートPC側でファンの回転数を調整し、ファンノイズがどの程度軽減されるかを検証。
利用したノートPCではファンの最大動作音が53dbほど、静粛モードで43dbほどで動作する。
ファンの回転しているときの音の大きさ | 聞こえ方 |
---|---|
53db時 | ファンノイズはわずかに聞こえるが気にならない程度 |
43db時 | ファンノイズが全く気にならない |
体感的なものを数値に置き換えて表現するなら10dbほど小さくなったように聞こえる。
ノイズキャンセリングは音の種類によって、聞こえ方が異なるため一概には言えないのだが、例えば、隣で会話している人の声が極端に小さく聞こえ、集中して聞き取ろうとしても聞こえづらいレベルまで小さくなる。
カフェで作業したり、シェアオフィスなどで仕事をする際に非常に有効だと感じた。
筆者の場合、ゲーミングノートPCを検証しながら記事を執筆しなければならないという状況が発生した際にノイズキャンセリングイヤフォンを利用していたが、バッテリーの持続時間や、ノイズキャンセリングそのもののノイズが気になっていた。
WF-1000XM4は前モデルの気になる点を確実に克服していると感じた。
バッテリー性能について
バッテリー性能についてはすでに冒頭で紹介しているが、音楽再生なしのノイズキャンセリングのみ利用した場合も測定してみた。
検証は「Headphones Connect」にてノイズキャンセリングを適用した状態でDSEE Extreme Auto/時、音楽の再生はしないというもの。1時間ごとにバッテリーの残量を「Headphones Connect」アプリで確認し表計算ソフトにまとめるというシンプルなもの。(この測定結果はWF-1000XM4の動作を保証するものではありません。)
WF-1000XM4のノイズキャンセリングのみ連続動作時間 | ||
---|---|---|
動作時間 | 左 | 右 |
1時間後 | 99% | 98% |
2時間後 | 92% | 91% |
3時間後 | 85% | 84% |
4時間後 | 78% | 77% |
5時間後 | 68% | 68% |
6時間後 | 63% | 61% |
7時間後 | 58% | 55% |
8時間後 | 50% | 48% |
9時間後 | 42% | 40% |
10時間後 | 33% | 29% |
11時間後 | 23% | 20% |
12時間後 | 1% | 1% |
結果として、この方法では12時間ほど連続で再生しつづけることができた。
12時間といえば、羽田-NYの往路分なので、機内で利用すればノイズキャンセリングの状態でフライトを楽しむことができる。その間仕事をしてもいいし寝ててもいい。
もちろん、密閉型のイヤフォンなので人によってはつけている最中に耳が痛くなることもあるかもしれないが、筆者自身が使った感想としては3-5時間くらいなら実用的だと感じた。
音質について
WF-1000XM3からの進化点は低音の塊感が増したのと、高音と繊細な音色の解像感が上がっている点。前モデルWF-1000XM3と比較してみると、特に中高音域のディテールがよりはっきりしたと感じた。
ハードロック系の低音域と高音域の振れ幅がある楽曲を聞いてみるとその差がわかるかもしれない。
また、バスドラムのような低音をダイナミックに表現する楽器の音を聞くと、大きな音の塊が飛んできたような感じで迫力あるサウンドを楽しめる。
ソニー性能ヘッドフォンはアップスケーリングテクノロジーでハイレゾ相当まで引き延ばされた情報を「Headphones Connect」のイコライザー機能で自分の好きな味付けに調整できる点も魅力の一つ。特に今回のWF-1000XM4においては、ノイズキャンセリング性能も相まって非常にクオリティの高い音質を楽しむことができる。
このようにWF-1000XM4の音質は、「DSEE Extreme」によって支えられているため、これを超えるテクノロジーがない限り、筆者はソニー製のイヤフォンからは買い替えないつもりだ。
今回の開発者インタビューも非常におもしろいのでソニー好きは是非チェックしてみるといいだろう。
WF-1000XM4の評価とまとめ
良い点
- ソフトウェアがわかりやすくだれでも自分に合ったイヤーピースが使える
- ノイズキャンセリング性能が非常に素晴らしく仕事用に使える
- バッテリー持続時間がほぼ公称値通りで一つの家電製品として素晴らしい
- ワイヤレス充電対応でコンパクトになり利便性が向上
- DSEE Extreme+イコライザー+ノイズキャンセリングのフルコンボを決めると音楽がもっと楽しくなる
気になる点
- ワイヤレスイヤフォンとしては価格が高い
- マルチポイント接続に非対応
「あったらいいな」が全部入り!いつでも仕事に集中したい人におすすめ。
WF-1000XM4は「ただ音質が良い製品」というだけでなく、カフェやオフィス、自宅で仕事をする際の生産性を上げくれるアイテムとしても使える。気になる点で価格を上げたが、その分を仕事でカバーできれば安い物。
ただし、マルチポイント接続に対応しない点は気になるかもしれない。接続の切替は瞬時に行えるため致命的とは言えないが、WF-1000XM4は音響機器としての性能が非常に高く、様々なデバイスで利用できるため、PCやスマートフォンの垣根を簡単に超えてくれるマルチポイント接続機能があれば最高だった。
個人的に素晴らしいと思ったのはスペック通りに動作してくれたこと。普段筆者はPCレビュアーとして活動しているため、イヤフォンの細かい検証までは行わないのだが、バッテリーの動作検証でメーカー公称値にかなりの正確性があるということがわかったため、ソニーの信頼度が増した。
WF-1000XM4
ソニー ワイヤレスノイズキャンセリングイヤホン WF-1000XM4 : 完全ワイヤレス/Amazon Alexa搭載/Bluetooth...