Appleが2022年のWWDCでM2チップとそれを搭載する新デバイスを発表した。カプコンのビックタイトルバイオハザードヴィレッジをApple siliconに対応させるなど、ノートPC市場へのインパクトが絶大だったように感じる。
この記事では年間60台以上のPCをレビューしている筆者の所感を掲載していく。
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新チップ「M2」について
まずは新プロセッサ、M2について
ワットパフォーマンスを強調
毎回、Appleイベントの動画を追ってくれている人からすれば、僕の予想が外れたんだと感じた人も多いかもしれない。
今回M2チップを搭載したMacBook Airが発売されてしまったからだ。僕は前回、「Mac Studioの動画で、M1チップが売れているのでM2は来ない」としていた。が、これはインテル第12世代プロセッサの性能が飛躍的に向上したから、シレッとラインアップに登場させてきたのではないか、と穿ってみてしまうのである。
M1と同じ製造プロセスだから飛躍的進化ではない
プロセスルールについては割愛するが、M2については4nmで来るかもという無責任リークが飛び交っていた。しかし蓋を開けてみれば5nm継続(M1と一緒)。飛躍的進化、というよりはマイナーチェンジに近い印象を受けた。
実際、これまでもAppleはパフォーマンスや製品そのものに自信がない時に、マーケティングの戦略としてカラバリ戦略をとることがあるが、今回のMacBook Airも同様にカラーが追加された。
デザインについては後述するが、パフォーマンスだけで考えるとM1チップと比較して大きなインパクトがなく、ユーザーが物足りなさを感じるかもしれないとAppleが考えているからかもしれない。
CPUパフォーマンス
CPUの性能はインテルが販売するCore i7 1255U、Core i5 1240Uを対象に比較していると思われる。
同じ消費電力であれば、2倍近い性能が出せるというグラフだ。
とはいえ、Windowsのクリエイター向けノートPCに搭載されているCore i7 12700H、Core i9 12900Kは14コアCPUを搭載し最大消費電力ももっと多くなるため、簡単に比較するためにモバイルノートPCをチョイスしたのだろう。
インテルのオンボードチップと比較したGPU パフォーマンス
GPUのグラフはモバイルノートPCに搭載されているインテルのオンボードGPU 「Intel Xe Graphics」と比較している。
あくまで今回はモバイルノートPCとの比較のようなので、最新のゲーミングノートPC、クリエイターノートPCと比較するとパフォーマンスにおいては有利ではないということだろう。
最新のインテルCPUとM1,M1Proのベンチマーク結果
Cinebench R23はCPUのパフォーマンスのみでコンピューターグラフィックを生成し、CPUの性能を測定するベンチマークソフト。点数が高ければ高いほど高性能とされているが、実際のソフトウェアを動作させた際の実性能と差が開く可能性があるが結果下記の通り
Cinebench R23の総合スコア | |
---|---|
Core i7 12700H | |
Core i7 12700H | |
Core i9 12900H | |
Core i7 11800H | |
Ryzen 9 5900HX | |
Ryzen 7 5800H | |
Ryzen 9 5900HS | |
Ryzen 7 5800H | |
Core i7 11800H | |
Ryzen 7 5800H | |
M1Pro(8コアMacBookPro) | |
Ryzen 5 5600H | |
Ryzen 7 5800U | |
M1(MacBook Air) | |
Core i7 11370H | |
Ryzen 5 5500U | |
Core i7 1165G7 | |
Core i7 1165G7 | |
Ryzen 5 4500U | |
Core i5 1135G7 |
M2チップはM1チップよりも18%ほど高速化していると表記しているが、単純なベンチマークスコアでいるとインテル第11世代プロセッサやRyzen 5000番台と同等のスコアに収まるだろう。
とはいえ、Apple Siliconの強みはAppleがいうように驚異的なワットパフォーマンスなのでその牙城が崩れることは数年はなさそうだ。
それでも、着実に進化
おそらく時期M3チップこそがAppleの大本命で、インテル、AMD、NVIDIAと比較して大きくリードできるプロセッサになるであろうことは一旦置いておいて、動画編集、画像編集など、クリエイターが多く処理しなければならないタスクに対してにパフォーマンスを上げているということはM1で課題であった最大搭載可能メモリを改善しているところからも伺える。
M2チップでは、最大で24GBのユニファイドメモリの構成を選択できるため、高解像度の画像データや動画データを扱うクリエイティブソフトウェアを複数起動させ、処理させてもおそらく問題ないくらいの性能はあるだろう。
新型のMacBook Airについて
Liquid Retinaディスプレイ搭載
新しいMacBook Airを高いととるか安いととるかは、ディスプレイをどれだけ評価できるかにも関わってくるかもしれない。
Liquid Retinディスプレイ、高精細、広式域、高コントラストのパネルを採用しており、クリエイティブワークに最適。
このモニターだけでも十分に価値があるため高すぎるということはない。かもしれない。
充電ポートをMagSafeに
M1チップを搭載したMacBook Airでは実装されていなかったMagSafeを搭載。
MacBook AirシリーズはUSB-Cが2ポートなので、充電をすると1つのポートしか使えなかったのが弱点だが、専用の充電ポートを搭載して克服。
もちろん、USB-CからPC本体への充電にも対応しているため、使い方の幅が広がったと考えても良いと思う。
デザインはMacBook Proっぽくなった
新型のM2 MacBook Airはこれまでの先細りになるテーパー加工をやめて、現在販売されているMacBook Proのようなフラットな形状で高さが1.13cm固定になっている。おそらくキーボードやタッチパッド周りもMacBook Proと同じような感じだろう。
MagSafeを搭載する分、タッチパッド側にロジックボードを長くしなければんらなかったからこれにしましたって感じなのだろうか。
価格
従来モデルよりもベースの価格は大きく上昇した。前述の通り、ディスプレイ代金として考えるとそこまで高くなってはいないような印象ではあるが、本格的にクリエイティブワークをしない人にとって、ただ価格が高くなっただけと感じてしまう人もいるかもしれない。
また、相変わらずメモリは8GBからスタートで選択可能になった24GBは追加金額が5万円を超える。高速なユニファイドメモリなのでそこまで高くないような気もするが、ベースで16GBでよかったのでは?
新型MacBook Airの感想
M2チップがマイナーチェンジだと考えているので、筐体が新しくなってもやはりマイナーチェンジ感が否めない。フルHDの動画編集をメインで行うクリエイターならM1チップ搭載のMacBook Airでも全く問題ないため、付加価値の訴求が甘い気がした。
個人的にM1チップ搭載モデルからの買い替えは控えつつ来年のM3まで待った方が良いだろう。