デルが販売するU4021QWは39.7型の10bitカラーに対応した曲面ウルトラワイドモニター。
特徴は4K解像度(3840×2160ドット)を横に広げた5K2K(5120×2160)の解像度で、これまで大型モニター特有のWindowsアイコンが高解像度で小さくなってしまい使いづらいといった問題を解決してくれるもので、ドットバイドット表示や125%スケーリングで使いやすい。
設置から3か月ほど利用したので検証結果や使い勝手を記載していく。
スペック
DELL U4021QW主要スペック表 | |
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モニターサイズ | 39.7型 |
解像度 | 5120×2160ドット |
アスペクト比 | 21:9 |
パネルタイプ | IPS |
輝度 | 300cd/㎡ |
本体寸法(幅×奥行き×高さ,cm) | 94.66×24.8×45.78 |
VESA | VESA 100対応 |
電源 | 内蔵型 |
そのほか、スイベル、ティルトなどモニター位置調整機能が付帯。詳細はメーカーページ、Amazon販売ページから確認可能。
特徴
10bitカラー対応のクリエイター向けウルトラワイドモニター
フォトグラファーやビデオグラファーにとって10bitカラー表示に対応しているのは非常に重要。一般的なモニターは表示色が最大1677万色。それに対し10bit対応のU4021QWは10億色程度までの表示が可能に。
色の表現できる幅が増えるというのは編集によって調整が施しやすい。フルサイズのミラーレスカメラの動画撮影機能で「10bitカラー対応した」という文言を見かけるが、この10ビットカラーをモニターに写すためには専用のGPUを搭載したデスクトップPCと10bitカラーに対応したモニターが必要。
U4021QWは高解像度といった点だけでなく色再現度においてもクリエイターに必要なスペックを備えている。
とはいえ、ハードウェアキャリブレーション(PC出力ではなくモニター側での色調整)には非対応なのでビデオグラファー向けモニターといった感じだろう。
10bitの有用性についてはAkiさんが執筆しているブログを参考にしてもらえれば。
最大90W出力のUSB-PDにも対応したThunderbolt 3搭載USB HUB機能は業界最高クラス
U4021QWのUSB-Cは最大90W出力のUSB-PDに対応。クリエイターノートPCにはUSB-Cからの出力で充電、外部モニターへの映像出力可能な機能が搭載されているモデルが多い。
筆者はDELL XPS 15を利用しているが、90Wでフルパワーで動作可能なのを確認している。。
またWindows PCだけでなくAppleが販売するMacBook AirやMacBook ProもUSB-Cからの出力に対応しているため、U4021QWが1台あればノートPCのACアダプターは不要ということになる。
そのうえでUSB HUBとしての機能を利用できるため、非常に利便性が高い。
最新のクリエイターノートPCはRJ45(有線LAN)やUSB-Aを省いたものが多く、外部ストレージやマウス、キーボードを接続しづらいといった点があるが、DELL U4021QWのようなウルトラワイドモニターを利用すれば解決する。
モニター側のHUB機能はUSB-CやUSB-Bのアップストリームを介して利用可能なので、それぞれのケーブルを差し替えれば別のデバイスで利用できるのも魅力的だ。
実際にMacBookAirとWindowsを交互に接続した際のイメージ上記動画を参考に。
価格は20万円前後!クリエイターワークで検討している人におすすめ
デル公式ページではクーポン適用時で18万円台から19万円台と、高価なモデルなため上下が激しい。半導体価格が値上がりしている状態では大きな値下げはあまり期待できないが、その分のクオリティはあると思われる。
HDRには対応していないため、YouTubeクリエイターや配信者、トレーダー、ウェブサイト制作者がターゲットのモニター。
デザイン・付属物について
箱・付属品について
39.7型のパネルを採用したモニターの箱は非常に巨大で身長165cmの筆者が両手で抱えてやっと机に設置できる程度のサイズ。総重量は20kgオーバーで女性一人だと持ち運ぶことはかなり厳しいだろう。
箱は二重構造を採用しており、上側(箱にどちらを上にしてほしいか書いてある)に台座やアームなどの付属物がある。
下側のモニターは、段ボールに丁寧に支えられ、底と側面に接触しないような二重梱包(パネルそのものが宙に浮いている状態)で、その中にさらに白いシートがかぶされている。モニター単体で10kg以上あるのでかなり厳重だ。筆者が見た中でトップクラスの梱包の丁寧さなのでかなり乱暴に扱ってもパネルが破損することは考えづらい。
消費者としてはこの梱包にもお金が買っているのかと思うとちょっと憂鬱な気分になりつつも、DELLは佐川発送なのでこのくらいしてもらわないと困るというのもある。
- USB-Cケーブル
- USB A to USB B(アップストリーム用)ケーブル
- HDMIケーブル
- DPケーブル
- 電源ケーブル
各種ケーブルが付属しているため別途ケーブルを購入する必要はない。デルのモニターは電源が内蔵されているため、ケーブルもデスクトップPCなどに使われている電源ケーブルでも問題はなさそうだ。
工場出荷時のレポートも付属。クリエイターをターゲットとしたモニターはパネルの品質を担保していることを証明するためこうしたレポートが付属する。 DELL U4021QWはDelta E≦2で色再現度が高く工場出荷時の状態であればプロのフォトグラファー、ビデオクラファーが使うのに適したモニターだ。
組立について
台座部は2.6kgほど。手回し可能なネジで工具は不要。必要なのは筋力です。
アーム部と合わせて4.0kgオーバーでかなりの重量だが、安定感があり使い勝手は良い。
台座部とアーム部はプラチナシルバーで、デルのDELL XPS 13に合わせやすいカラー。もちろんMacBookシリーズにも合わせやすいのでシンプルなデザインのノートPCが好きな人には受け入れやすいデザインだろう。
台座部のサイズは、13.3型のノートPCほどあるためかなり巨大だ。
組立てた台座とアームを箱に入っているパネルとドッキングしてから取り出せば完成。この状態まで梱包の段ボールをかぶっているため傷つける心配はない。
パネル性能・音質について
基本的には工場出荷時のレポートに記載されている内容をうのみにしてしまって問題ない。
が、一応筆者が持っているキャリブレーションツールで色域を測定してみた。カラーモードは標準。i1Displayの標準プリセットで計測
色域
Adobe RGB
Adobe RGBカバー率は87.8%
DCI-P3
DCI-P3カバー率は92.8%
sRGBカバー率
sRGBカバー率は99.8%
デルの表記よりも少し足りない気がするが、カバー率ではなく対比表記なのかもしれない。色再現度を追求していくプロフォトグラファーにはほかにもふさわしいモニターはありそうだが、ウェブ上にアップロードするための動画クリエイターには最適なモニターといえるだろう。
スピーカー
U4021QWは9W出力のスピーカーも内蔵されているが音質はモニター付属のスピーカーといった感じで特筆すべき箇所はない。
専用のスピーカーを持っていないのであれば利用してもよいかなと思えるレベル。
PBP/PIPについて
DELL U4021QWはピクチャー・バイ・ピクチャーやピクチャー・イン・ピクチャーに対応。
ピクチャー・バイ・ピクチャーやピクチャー・イン・ピクチャーは異なる2つの映像ソースを1枚のモニターに表示する機能で、写真のようにWindowsとMacそれぞれの映像を出力するようなことができる。
39.7型であれば画面半分を占有しても2つの映像ソースが見やすく実用性はありそうだ。
とはいえ、標準的な16:10や16:9のアスペクト比で出力すると上下にレターボックス(黒い部分)が出現してしまうためもったいない。出力設定を2560×2160ドットに変更すればそれぞれで全画面利用が可能。
3か月使ってみて感じたメリット・デメリット
作業効率は最高
筆者の僕がウルトラワイドモニターをチョイスするのは、モニター2枚を設置せずに十分な作業領域を手に入れたいからである。メインPCはこれからWindows 11にアップグレード予定で、マルチウィンドウによる作業が行いやすくなる。
左側に記事執筆画面、右側にlightroomClassic CC(ブログ用の写真)右下にメーカーページを表示させながら執筆。
DELL U4021QWは縦の解像度が4K相当で長くウェブサイトの閲覧であれば必要にして十分な作業領域を確保できる。
ドットバイドット表示にすれば15分の尺の動画のタイムラインをすべて把握でき、フルHD解像度までの動画であればプレビューで等倍表示可能だ。
YouTuberにとってこれほど作業効率が上がるモニターも多くなく、5K解像度の強さを実感した。
また、2500Rの湾曲率は曲がっているのを人間に感じさせない程度に緩やかなのでフラットモニターと同等の使用感がある。
文字、アイコンの小ささはWindowsの機能でカバー
5K解像度のモニターはWindowsをドットバイドット表示にさせるとアイコンが人の手の小指くらいのサイズまで小さくなってしまう。とはいえ、スケーリング機能を使ってしまうとせっかくの作業領域がなくなってしまうため、標準的な作業を行う際は、文字だけ大きくすることをおすすめしたい。
Windows 10は設定→設定の検索→「文字」で文字を大きくする項目が出現するため、文字のサイズのみ推奨の150%表記にすれば、「文字が小さすぎて見えない」問題は解消する。
この方法は27型サイズの4Kモニターなどでも同様の効果を得られるため作業領域を確保しつつ、テキストを見やすくしたい場合は文字だけ大きくしてみるのはありだ。
ただし、フォルダの表示を「詳細」などにしているとその文字は小さいままなので注意。筆者は解像度の高さを利用して特大アイコン表記にしている。
人におすすめしづらい価格帯
DELL U4021QWはウルトラワイドモニターの正解ではありそうだが、ほかの人におすすめできるか?というと別の選択肢を進めたくなってしまう。
現状、デルをはじめとした大手外資系メーカーのモニターは4K解像度のモニターが低価格に手に入る。例えばBenQのPD2700Uは6万円前後で購入可能で、2枚買えば5K解像度を超えた作業環境を手に入れられるのである。USB HUBの機能を差し引いても差額の6万円はあまりにも大きい。
設置スペースの環境を無視できるのであれば、利便性も含め4K2枚のほうが良いかもしれないと感じているので、DELL 4021QWにコストパフォーマンス的なうまみはないのだろう。
とはいえ、1枚で完結することに魅力を感じているのであればこれ以上のモニターは存在しない(LGに似たようなモニターはあるけど)ので検討してみはいかがだろう。