Intel Coreシリーズが第9世代となり、i7のハイパースレッドが閉じられたことで、Core i7 8700Kにゲーミングスコアで負けるというニュースを見て、「Ryzenでよくね?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、2018年現在でAMD社の第2世代目の『Ryzen』CPUを検討されている方のために、自作PCおよびメーカーから借りた貸し出し機による検証結果をお伝えしたいと思います。(AMD好きはすでに買っていると思うし、今この記事を読んでいる人は価格的にインテルではなくRyzenを検討しているでしょうから。
先に、結論だけ記載しておくとRyzen 5 2600が圧倒的におすすめです。
Ryzen 7 2700XとRyzen 5 2600のスペック
Ryzen 7 2700X | Ryzen 5 2600 | |
コードネーム | Pinnacle Ridge | Pinnacle Ridge |
プロセスルール | 12nm | 12nm |
コア数 | 8コア | 6コア |
動作クロック | 3.7Ghz | 3.4Ghz |
Turbo Core | 4.3Ghz | 3.9Ghz |
TDP | 105W | 65W |
希望小売価格 | 329ドル | 200ドル |
付属CPUクーラー | 光る | 光らない |
オンボードグラフィック | なし | なし |
同じ世代のCPUなので、オンボードグラフィックはなく、単純にランクの違いによる差と考えて問題ありません。
大きな差としては、価格およびCPUのコア数ということになります。目下検討されている方に関しては、価格.comやAmazonなどの価格差を見て2万円弱(正確に言うと1万8千円程度)の差でいったいどれほどの性能差があるのか。
市場はコスパ重視とパフォーマンス重視が明確に分かれている
価格.comのデータによると、2018年10月のCPU全体の売れ筋は15000円~20000円(Ryzen 5 2600やIntel Core i3 8100など )のミドルスペックCPUがが17.98%、35000円以上のハイパフォーマンスモデル(Core i7 8700Kなど)が38.52%とユーザーニーズが如実に表れています。
Ryzenシリーズを選ぶ際、コスパは特に重要です。インテルではなくAMDを選ぶのであればパフォーマンスによる裏付けがないと触手が伸びづらい。記事執筆時の2018年11月12日現在の情報によると価格.comではRyzen 5 2600が売れ筋3位と大健闘。(Ryzen 7 2700Xは5位)
いずれも不況だったAMDはかなり健闘していると思います。
Ryzen 7 2700XとRyzen 5 2600のパフォーマンス
検証機のスペック
Ryzen 7 2700X | Ryzen 5 2600 | |
マザーボード | ASUS ROG STRIX X470-F GAMING | ASUS PRIME X470-PRO |
メモリー | 16GB『DDR4 2400Mhz』 | 16GB(8GB×2)『DDR4-2666 DIMM (PC4-21300) 』 |
ストレージ | NVMe SSD:500GB | NVMe SSD:240GB |
グラフィックス | ASUS ROG GTX1060 6GB | MSi GeForce GTX 1060 6GB |
ここからは実際の性能にのっとって比較していきたいと思います。検証機については、僕の自作PCとパソコン工房からレンタルしたDSP版のWindows機のデータを使用します。(下記記事がそれぞれのレビュー記事です)
CINEBENCH R15
Ryzen 7 2700X
Ryzen 5 2600
CINEBENCH R15のベンチマークスコア※ | |
Core i7 9700K | |
Core i7 8700K | |
Core i5 8400 | |
Ryzen 7 2700X | |
Ryen 5 2600 |
※CINEBENCH R15によるCPUの性能を測るテスト結果。当サイトの別PCによる測定結果です。あくまで参考指標です。
CPUのパフォーマンスを測定するCINEBENCH R15では、Ryzen 7 2700Xが1745cb、Ryzen 5 2600が1092cbでした。
Intel CPUの上位モデルと比較するとやや見劣りするも、Ryzen 5 2600はCore i5 8400以上のパフォーマンスがありました。Ryzen 7 2700Xのスコアは驚異的ですが、CINEBENCH R15では偏ったスコアになりがちです。CPU Markでも比較してみました。
CPU MARK
Ryzen 7 2700X
Ryzen 5 2600
CPUMARKのベンチマークスコア※ | |
Core i7 9700K | |
Core i7 8700K | |
Core i5 8400 | |
Ryzen 7 2700X | |
Ryzen 5 2600 |
CPU MARKでは、Core i5 8400と僅差に、CPUMARKの方がCINEBENCHよりも実際の性能に近いスコア付けができるため、Ryzen 5 2600はCore i5 8400よりも優秀であると判断できそうです。
3D MARK Time Spy
Ryzen 7 2700X+GTX1060(6GB)
Ryzen 5 2600+GTX1060(6GB)
10%ほど、Ryzen 7 2700Xの方がスコアは伸びているものの、体感による差がほぼない性能差です。
3D MARK Time Spy 4K
Ryzen 7 2700X+GTX1060(6GB)
Ryzen 5 2600+GTX1060(6GB)
4Kで比較してみましたが、こちらも同様Ryzen 7 2700Xの方がスコアは伸びますが、誤差の範囲程度のものです。ゲーム系のベンチマークでは、GPU性能がモノを言うため同一のチップを使えばスコアが似てくるのは当たり前といえば当たり前なのですが、GTX1060を搭載するマシンで構成する場合Ryzen 5 2600でも十分であるといえます。
シャドウオブザトゥームレイダー(Shadow Of The Tomb Raider)
Ryzen 7 2700X+GTX1060(6GB)
Ryzen 5 2600+GTX1060(6GB)
FHD(1920×1080ドット)解像度で”高”を選択した時の結果です。
平均フレームレートは1fpsしか差がありませんでした。
レンダリングフレーム数はやはりRyzen 7 2700Xのほうがわずかに勝っていて、ハイパワーGPUを搭載した際にもう少し差は出そうな気もします。
動画のレンダリングタイム
実際に僕がYouTubeに投稿したテロップ、アニメーション有の5分程度の動画のレンダリングテストを実施し実性能を計測します。
レンダリングタイム比較 | CPU単体 | NVENC(CPU+GPU) |
Ryzen 7 2700X+GTX1060(6GB) | 11分40秒 | 8分44秒 |
Ryzen 5 2600+GTX1060(6GB) | 11分46秒 | 7分27秒 |
もしかしたら、Ryzen 5 2600のモデルに搭載されているメモリが2666Mhzのクロックで動くものが採用されているかもしれません。
RAW現像
Adobe Lightroom Classic CCにて100枚のRAWファイル(1枚あたり24MB程度)を書き出す時間を手動計測しました。
スペック | 書き出しにかかった時間 |
Core i7 9700K +GTX1080 メモリ32GB | 1分24秒 |
Ryzen 7 2700X+GTX1060 メモリ16GB | 1分46秒 |
Ryzen 5 2600+GTX1060 メモリ16GB | 1分43秒 |
こちらも同様に若干早い。
実性能でもベンチマークテスト同様、Ryzen 7 2700XとRyzen 5 2600ではほとんど性能差がない、という結果に。これは自作PCにRyzen 7 2700Xをチョイスした僕としてはショックだ。
動画レンダリング時のCPU温度
Ryzen 7 2700X
Ryzen 5 2600
ソフトウェアの最適化が進めばこの限りではないのかもしれませんが、僕が利用しているVegas Pro15においては、ほぼ変わらないスコア差であるとともにCPUの温度もそこまで変わりません。
あれ、ひょっとして僕はRyzen 7 2700Xで損してないか?
まとめ:コスパで選ぶならRyzen 5 2600
以上が、実性能も含めたベンチマーク比較です。ミドルクラスGPUであるGTX1060を搭載させるつもりであればRyzen 5 2600で十分であることがわかりました。
Ryzen 5 2600は2万円弱の価格帯で購入できることを考えるとかなりコスパの高いCPUといえます。(内蔵グラフィックスがないため、GPUは必須)
ゲームをやるつもりでCPUの構成を考えるのであれば、Core i5 8400、Core i3 8100なども選択肢に上がると思いますが、価格的な優位性もありパフォーマンスも十分であるため、2万円以下のCPUをGTX1060以下のGPUと構成して購入するのであれば、Ryzen 5 2600一択といってもいいと思います。(Core i5 8400は2万円以下では現状、購入できません。)
Ryzen 5 2600搭載のおすすめデスクトップPC紹介
DSP版Windowsモデル(メーカー独自BIOSではなく、パーツ組)を採用したため、これから自作PCに挑戦する初心者の方にオススメです。