msiといえば、2018年に日本国内で最もゲーミングノートPCを販売する台湾のPCメーカーとして有名ですが、昨年キヤノンと提携強化を行い、クリエイター向けのノートPCにも注力しています。
msiの得意分野は薄くて、軽くて、高性能でオシャレ、を追求したモデル。
価格帯は国内大手のBTOメーカーよりも高めですが、不動の人気を誇ります。
今回、専用GPUを搭載した15.6型のノートPCで重量が1.6kgというモバイル用途に最適化されたプロ用のクリエイター向けPC「Prestige 15 A10SC」をメーカーからお借りしたので、検証結果と僕の感想を記載します。
Prestige 15 A10SCの特徴
普段メーカーに提示されたものを検証することが多くなってきたのですが、Prestige 15に関しては完全に僕のリクエスト。
Prestige 15は個人的にMSIでも一押しの製品でして、その理由は高性能化と軽量化が進んだ最新のクリエイターモバイルノートPCとして製品価値が高いと感じているからです。
動画で見る
YouTubeで概要を解説しています。実写です。
第十世代CPUでさらに早く
Prestige 15 A10SCはインテルモバイルプロセッサ『Core i7 10710U』を搭載しています。
第十世代のモバイル用Core i7は6コア12スレッドとなり、動画編集や、RAW現像などの書出し時のパフォーマンス向上がみられ、ピーク時の性能は据え置きタイプのノートPCに搭載されるHシリーズに迫る勢いです。
普段使いでは消費電力をセーブしつつ、作業中にパフォーマンスを発揮してくれるため、モバイルでコンテンツクリエイトするのに最適なCPUだと思います。
ケーブルを限りなく少なく、USB PD対応のThunderbolt 3を2ポート採用
Prestige 15の最大の推しポイントはUSB-Cポートから高出力で給電を行えるUSB-PDに対応するThunderbolt 3ポートが2つ搭載されているところでしょう。
PC本体をモバイルバッテリーで充電することはもちろん可能で、上記画像のように、USB-PD対応のモニターと接続すれば、ケーブル2本でトリプルモニター環境が構築できてしまうのです。
専用グラフィックス搭載で1.6kg
Prestige 15は専用グラフィックスのGTX1650 Max-Qを搭載していますが、ボディ本体を薄くすることで軽量化に成功しています。
実測値では、1.73kgほどでしたが、フルHDモデル(A10SC-026JP)と4Kモデル(A10SC-025JP)の差なのかもしれません。
ACと合わせて計2.16kgほどです。携帯性に優れたUSB-PD対応のアクセサリが増えているので別途そちらを用意してもよいでしょう。
いずれにしても、15.6型モデルでこの程度の重量に抑えているのは驚きで、メインPCとしても十分に耐えうるスペック、そして軽量性をとことん追求したクリエイター向けノートPCだと思います。
ラインアップとおすすめ
A10SC-025JP | A10SC-026JP | A10SC-066JP |
モニター | ||
---|---|---|
15.6型4K(3840×2160) | 15.6型フルHD(1920×1080) | 15.6型4K(3840×2160) |
CPU | ||
Core i7 10710U | ||
GPU | ||
GeForce GTX1650 Max-Q | ||
メモリ | ||
32GB | 16GB | 32GB |
ストレージ | ||
512GB | 1TB |
モニター解像度はフルHDと4Kでわかれていますが、出力ポートは変更がないため、個人的には、A10SC-026JPをベースとしてメモリを増設するようなカスタマイズがおすすめです。
MSI公認ショップであれば、下記のとおりメモリの増設、サブストレージの追加、OSのグレードアップが可能です。
国内のMSI公認ネットショップですと、PCパーツショップのarkアークがおすすめです。

Prestige 15 A10SC
検証機のスペック
検証機 | Prestige-15-A10SC-025JP |
---|---|
モニター | 15.6型4K(3840×2160ドット)ノングレア |
CPU | Intel Core i7 10710U |
GPU | Nvidia GeForce GTX1650Max-Q |
メモリ | 32GB(16GB×2) |
ストレージ | 512GB(NVMe) |
映像出力端子 | Thunderbolt 3×2/HDMI×1 |
カードリーダー | microSDXC |
無線通信機能 | Wi-Fi6 AX200(2×2 11ax Bluetooth 5) |
連続駆動時間 | 約16時間(JEITA2.0) |
サイズ | 356.8×233.7×15.9mm |
保証期間 | 購入時から2年間 |
検証機は、4Kモニターを搭載した、中間グレードのモデルです。
Prestige 15は無線通信規格ももちろん最新のテクノロジーを採用しているため、市場で販売されているクリエイター向けノートPCのお手本のような構成だと思います。
クリエイター向けソフトウェアの快適性を確認
Adobe Premiere Pro
過去、実際に僕がYouTubeにアップロードしたこのとある、アニメーションありのフルHD画質、テロップ、アニメーションありの動画の元データを使い書き出しを実行しました。
書き出し条件は下記の通り
- H264
- YouTube 1080P
- 動画の尺を5分に設定し書き出し
Prestige 15(A10SC)の動画の書き出し時間 | ||
---|---|---|
ソフトウェア | 4分44秒 | |
CUDA | 2分52秒 |
レンダリング時間は上位のCPU第9世代の『H』シリーズと同程度の水準でした。
Adobe Photoshop(フォトショップ)
AdobeのPhotoshopはクリエイターだけでなく、写真のレタッチやイラスト制作などにも利用されます。
Puget System社のPhotoshop用のベンチマークソフトを利用し、他社のノートPCと比較します。
mouse X5-BのPhotoshopの快適性 | ||
---|---|---|
機種 | Prestige-15-A10SC-025JP | ZenBook 14 UX534FT-A9012 |
CPU | Core i7 10710U | Core i7 8565U |
GPU | GTX1650 Max-Q | GTX1650 |
メモリ | 32GB | 16GB |
総合スコア | 772/1000 | 655/1000 |
一般処理スコア | 67.8 | 52.7 |
フィルタースコア | 84.5 | 72.1 |
GPUスコア | 90.8 | 60.9 |
Photomerge(写真結合)スコア | 81.6 | 78.1 |
フォトショップのテストでは、画像結合やレンズフィルターなど、特に重たい作業にかかった時間を計測して点数化しています。
昨年レビューしたASUSのZenBookと比較しても大幅にパワーアップ。総合スコアはデスクトップ級のパフォーマンスでした。メモリの量とCPUのパフォーマンスがクリエイター向けのソフトウェアの快適性を大幅に上げています。
Adobe lightroom Classic CCによるRAW現像
RAWデータの加工が可能なAdobe lightroom Classic CCにて書き出しを終えるまでの時間を計測しました。条件は下記のとおりです。
Adobe lightroomClassic CCにて、Adobe Lightroom Classicにて、α7Ⅱで撮影したRAWファイル(1枚あたり24Mb)を100枚JPEGに書き出しするスピードを計測したところ2分17秒でした。
- 画像形式JPEG
- カラースペースsRGB
- 画質60
- メタ情報『すべてのメタデータ』人物情報の削除、場所情報を削除
100枚の現像にかかった時間 | |
---|---|
Core i7 10710U+メモリ32GB | 2分17秒 |
Core i7 8565U+メモリ16GB | 2分17秒 |
RAW現像はCPUパフォーマンスとメモリの量がダイレクトに影響する作業です。24M画素の写真を100枚程度ではそこまで差がでないのかもしれません。
コンテンツクリエイトの性能まとめ
マシン性能は10万円程度のミドルクラスのデスクトップPCと同水準です。が、15.6型で1.6kg(実測値では1.7kg)ですので、重量に対してのPC性能は業界でもトップクラスでしょう。
Thunderbolt 3を2ポート装備し4K解像度の液晶を搭載しているため、「コレ1台買っておけばクリエイターになれる」そんな感じで、Prestige 15は総合的な完成度で評価するのが正しいと思います。
本体デザイン
画面占有率90%の狭額縁デザインを採用しています。15.6型ですが、ぱっと手に取った時に感じたのは従来の14型と同程度の大きさ、ということです。
とはいえ、15.6型ということには変わりはなく、もちろん性能は14型以下のモバイルノートPCよりもずっと高性能。
天板
msiといえば、シールドにドラゴンのエンブレムですが、あまりゴテゴテしたデザインは、クリエイター向けPCとしては、使いづらいという意見もあるようで、控えめなプリントです。
天板はグレーカラーですが、側面のダイヤモンドカット加工部はブルーに光ります。落ち着いた配色でとてもいいと思います。
側面
底面は、ヒンジ部からキーボードのパームレスト側にかけて削られています。
本体は180℃開閉可能です。
サイドから見るとその薄さに目を奪われます。キーボードバックライトなどは装備していますが、基本最低限の装備といった感じで、ゲーミングノートPCと差別化が図られています。イメージとしては、GS65Stealthシリーズに近いと思います。
底面
底面のメッシュの吸気口は排熱効率を上げるための工夫で、内部パーツが透けて見えるほどです。それ以外はシンプルなつくりで、ゴム足が一般的なノートPCよりも若干高めに設定されています。
キーボード
日本語配列のキーボードです。フルサイズスケールでキーピッチは約19mmキーストロークは1.5mmほどです。
『F12』キーで画面を反転できます。
ディテールを確認する際に役立つのかもしれませんね。
本体素材がアルミで剛性が高いので、強めに押し込んでもたわみ、ゆがみは感じられません。
キーの打鍵感は柔らかめです。
タッチパッドは指紋認証センサー付きの大型のタッチパッドが搭載されています。キーボードの「F4」キーでタッチパッドを無効にできます。
液晶モニターの色域について
ノングレアの低反射タイプのパネルが採用されています。
画面占有率90%で迫力があります。
色域・トーンカーブ
MSI True Colorの「Adobe RGB」でガンマカーブを計測しました。僕の計測データですと、ほんの少しずれがありました。
Prestige 15の色域 | |
---|---|
Adobe RGBカバー率 | 96.9% |
sRGBカバー率 | 100% |
Adobe RGBカバー率は実測値で96%ほどでした。カラースペースが広いため、専門的なRAW現像から、動画編集におけるカラーグレーディングまで対応可能と思われます。
このほか、『ゲーマー』や『動画』など色味の調整が可能です。
インターフェースについて
Prestige 15はクリエイターにとって必要なポートを多く備えたノートPCでThunderbolt 3を2ポート 搭載しているのはMacbookを除くとそうはありません。
左側
- USB-C(Thunderbolt 3)×2
- HDMI出力
- オーディオジャック
オーディオジャックはゴールドメッキが施されており、ノイズが発生しづらくなっています。音声の編集は動画の編集者や作曲家にとってとても重要なのでこの仕組みはありがたいのではないでしょうか。
USB-CはUSB-PDにも対応しているため、モバイルバッテリーからの充電にも対応できます。
Prestige 15のバッテリー容量は5280mAhですので、10,000mAhのバッテリーがあれば1回フル充電できるイメージです。
右側
- microSDXC
- USB 3.2(Gen2)×2
ベンチマーク結果
Cinebench R20
![]() | |
---|---|
m-Book K700 Core i7 9750H | |
Prestige 15 Core i7 10710U | |
m-Book X400HS Core i7 8565U | |
m-Book X400B Ryzen 5 3500U | |
mouse X5-B Ryzen 5 3500U |
CPUのレンダリングスピードを計測するCinebench R20では、1587ptsという結果でした。ノート用の『H』シリーズに迫る勢いでパフォーマンスをあげていまして、モバイル用ということを踏まえれば驚異的です。
FF15
GTX1650 MaxQは通常のGTX1650よりもパフォーマンスが伸びない傾向にあります。
ゲームをメインでプレイしたい場合は、別の機種を選択したほうが良いと思います。
ファイナルファンタジー15を1時間連続駆動させた際のPC内部の温度です。CPUは89℃が最高でした。
動画編集など、クリエイティブな作業であれば、最大パフォーマンスを維持し続ける時間は1時間もないと思われますので、余裕でこなせると思われます。
SSD
Samsung製のSSDが搭載されていました。
数値的にはまずまずだと思います。Samsung製のバルク品は比較的品質が高いので問題ないと思います。
PCの表面温度
ファイナルファンタジー15を動かしているときのPCの表面温度です。キーボードの表面は47℃まで上昇しました。あまり触りたくない水準ですが、マウスの操作が主な作業であれば問題ないと思います。
排気部の温度は60℃程度でした。全体的にPCの表面温度は他の15.6型のノートPCよりも若干高いです。
しかし、このサイズ感を鑑みれば驚異的といえる水準で、なによりパフォーマンスの低下がみられなかったのが素晴らしいと思います。
msi Prestige 15(A10SC)の評価とまとめ
前評判、というよりもスペックをみただけで素晴らしいノートPCだということがわかったので、メーカー側にリクエストして検証機を借りたのですが、その期待を裏切らない素晴らしい製品でした。
1台で完結したいすべてのクリエイターにおすすめ
動画編集やRAW現像など、既存のフルHDコンテンツ、あるいは3000万画素以下の写真編集であれば、苦も無くこなせてしまう性能。そのうえで、Thunderbolt 3を2ポート搭載しつつPDにも対応しなおかつ、15.6型なのに1.6kg!!
msi Prestige 15高い拡張性、と軽量が強みのスキのないクリエイター向けPCとなっています。
総合力の高く万人におすすめできるノートPCですが、その分価格は市場平均よりも高い。
それに見合う性能は十分あると思うので、1台だけで済ましたい方はこのモデルを検討するとよいでしょう。
